21. Cry for the moon.
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黄泉に二人目の子どもが生まれた。もう間もなく飛影がくるという連絡と共にすがめが持ち込んだ情報は、蔵馬を心底驚かせるものだった。何でも、修羅が弟を欲しがったとか。修羅と同じく、黄泉の血や細胞といった�狆霾鶚瓩法⊂�しばかり手を加えることで生まれた元気な子だそうだ。そんなことができる装置があるらしい。自分がいない十数年の間で魔界は進歩したものだと、蔵馬は嘆息した。
「それがあれば一個体のみ…男女のどちらか一方だけでも子どもが生まれる、ということでございやすね」
「そういうことになるな」
すると、もはや雌雄の区別は不要な時代になってくるというわけである。それはすなわち――
「二ィさんもお子を儲けられてはいかがで？」
「え？」
すがめの言わんとしているところが掴めず、蔵馬は思わず呆けた。そんな蔵馬に、すがめは少し言いにくそうに続ける。
「その、ですね…黄泉様と同じ装置をお使いになれば………」
「…………」
自分にも、子どもができる。飛影との間に、子どもを持つことが出来る――……
「も、申し訳ございやせん、過ぎたことを申しやした」
沈黙する蔵馬にすがめは慌てて頭を下げたが、蔵馬には既に見えていなかった。
「飛影……子ども、欲しい？」
「――――………何？」
蔵馬の呟くような小さな問いに、飛影は白い胸を彷徨っていた顔を上げる。やや背けられた顔を覗き込むと、どこか遠くを見た瞳があった。
「子ども。赤ちゃん。――……欲しいと思ったことある？」
虚ろな響きで紡がれる単語に、飛影はわけが解からず眉をひそめた。
「何故、そんなことを訊く？」
こちらを向くよう促すかのように、優しい指がシーツに散らばる髪を梳く。それでも、蔵馬は飛影を見ようとはせず、淡々と言葉を紡ぐ。
「だったら申し訳なかったなと思いましてね……」
「どういうことだ」
心ここにあらずといった様子の蔵馬に、飛影は少しばかり苛立った。感情の荒れと共に、口調が自然ときつくなる。
「いや……」
目を伏せ、ゆるゆるとかぶりを振る。
「オレは、どうやったって生んであげられませんから………」
「当たり前だ。お前は男だろうが」
「…………」
それは蔵馬自身が一番よく解かっていた。むしろ女と見間違われることに嫌悪を覚えるくらいなのだから。
「それで？」
一向に蔵馬の真意が掴めず、焦れた飛影が先を促す。
「………子ども、作れるかもしれない」
「―――………何？」
突然のことに呆ける飛影に、蔵馬はようやく視線を向けた。強い、意志をもったそれを。そうしてはっきりと、己の思いを告げる。
「生むことは出来ないけど、作ることはできるかもしれない」
「わけが解からん、何が言いたいんだお前はっ!!」
わめく飛影に静かに続ける。
「そういう機械があるんです。黄泉はその機械で、自分の情報に少しの改良を加えて修羅を作ったと聞きました。だったらオレと飛影、二人の情報から作り出せば……」
「俺とお前の子どもができると、そう言いたいのか」
蔵馬は、はっきりと頷いた。
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