人間ってめんどくさい―クリスマス本番編

さて、いよいよクリスマス・イヴ。きちんと言われたとおりの時間を守って蔵馬の家にやって来た飛影です。迎え入れた蔵馬は既に出かける準備が出来ているようでした。飛影も先日買った服に着替えて出発します。腰に刀がないのに何となく心許なさを感じますが、「日本で帯刀は罪ですから」と蔵馬に刀を取り上げられてしまったので仕方ありません。まあもしものことがあったとしても、刀無しでも闘えるのですが。

飛影たちが待ち合わせ場所に着くと、既に何人かが集まって賑やかな笑い声を上げていました。相変わらずこちらがうんざりするほど元気そうです。
「おー飛影、蔵馬、こっちだこっちー」
輪の中心で手を挙げたのは幽助です。こっちだと言われなくても充分解かりやすすぎるというものです。
「久しぶりだなぁ飛影、元気にしてたか」
そう言って歯を見せて笑う幽助は本当に何も変わっていません。
「お前がそんな格好してるなんてめずらしーな」
「人間界を歩くのにいつもの格好じゃ目立つからね」
蔵馬がさらっと説明すると、幽助はそれで全てを理解したらしく、「良いじゃねーか飛影、似合ってるぜー」と飛影の肩をばしばしと叩いて笑いました。
「飛影、おめーちょっと身長伸びたか?」
「そういう貴様は相変わらずつぶれた顔だな、桑原」
ですが、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ締まった顔つきになったような気がします。勉強をしたせいでしょうか。
彼はこういう点でも蔵馬に感謝すべきだ、と飛影は思いました。
「飛影さん、お久しぶりです」
頭を下げた妹は、記憶の中の彼女よりも少しだけ大人びていて、明るい笑顔をしていました。それだけで今の毎日が彼女にとって良いものであるのだということが解かります。飛影はただ「ああ」とだけ答えました。妹もそれ以上何も言わず、蔵馬とも挨拶を交わすと、再開された談笑の輪の中に戻っていきました。
「変わらないでしょう、みんな」
蔵馬の言葉に、飛影は鼻で笑うだけでした。本当に、根本的なところは皆あの頃のまま、変わらずにそこにいました。

夕食を食べたり、ゲームセンターに行ったり、イルミネーションを見たり、賑やかな時間はあっという間に過ぎていきました。日付が変わる前には解散しました。これからそれぞれで過ごす夜があるのです。
「今日は随分あちこち行きましたね」
帰り道、飛影と蔵馬は二人で人気のない裏通りを歩いていました。やはり元が妖怪の彼らにはこちらの方が落ち着けます。
それは他の妖怪にとっても同じことでした。妙な気配を感じると思っていたところ、現れたのは妖怪の群れでした。何やら巨大な塊を取り囲んでいるそれらは子どものような体格をしていますが、C級並の力を持っていることが感じられます。飛影たちに気付いて彼らを一斉に振り返ったのは計200個、100対以上の目玉でした。


クリスマス準備編
クリスマス本番編2

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