『蔵馬が死んだ』


押し黙った幽助がやっとその言葉を口にしたのは、彼が訪ねてきてから数時間、経った頃だった。


『オレがあん時油断なんかしなけりゃ、あんなことにはならなかったんだ――』


身体の中心に風穴。
ほぼ、即死だったという。


飛影はぽつり、ぽつりと語る幽助の言葉を、半ば上の空で聞いていた。
彼が蔵馬の遺体を弔った場所を書いた紙を置いて帰っていった後も、ただじっと、同じ箇所を見つめていた。


蔵馬が死んだ?


バカな。
そう思い嘲笑する。


あれほどまでにしぶとい奴が、そう簡単に死んだりするわけが無い。
どうせまた、奴のたちの悪い冗談というやつだ。
突然どこからともなく現れて、俺達が感傷に浸っているのを見てからかうつもりだろう。


「フン、俺を騙そうとしても無駄だぞ、蔵馬」
彼に出会ってから数十年。
もういい加減、彼のやり口は知り尽くした。
そう思う片隅――胸の奥がどうしようもなく疼くのは、きっと気のせいだ。


――見つけてやる。


蔵馬が自ら出てくるより先に。
‘冗談だよ’――そう言って、微笑む前に。


………それからほどなく、幽助の元に飛影失踪の知らせが届く。

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