まさに、一瞬の出来事。

閃光とともに迸った赤が己の胸から吹き出ているのだと気付くのに、少しの間を要した。
続いて全身を襲いくる、熱さにも似た激しい痛み。
目の前が白んで、ああ、久しぶりだななんてのんきに思った。
前にも一度、この感覚は経験した。
そう、あれはまだ、自分が生粋の魔物であった頃。

これは、



というものだ。

あの時の自分にはまだそれだけの力はあったが、今は無い。
同じ手は使えない。


伝説の妖狐・蔵馬の、本当の最期。


仲間を庇っての死。
決して悪くない死に方だ。


でも、でもせめて、最期は彼の傍で――


遠のいていく意識の中で、少しの未練が自嘲気味に笑う。


どうか、貴方が幸せな一生を送れますように。


それだけを願って、オレは意識を闇へとおとした。


2

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