喉の奥で、飛影がくっと笑った。


「道――だと?それは何の道だ?」

『飛影――……』


蔵馬の整った顔が表情が哀しげに歪む。


『飛影、このままでは貴方はいずれ死んでしまう!』

「なら、殺せ!!」

『飛影!!』


強い声に、落ちかけていた飛影の頭が引き上げられる。


『このまま、立ち止まっているだけでは何も進まない!』


血を吐く思いで蔵馬が叫んだ。


『飛影……オレは死ぬ間際、貴方のことを考えた。
貴方に幸せな一生を送って欲しいと――』


泣きそうな、小さな震える声。


「……貴様の存在無しで――……今更幸せなどあると思うのか」


共に過ごした数日。
その数日が、今まで生きてきた中で何よりも大きすぎて。

互いの存在が、大きすぎて――……


『そんなの……オレだって同じなんだ』


命あるものが、大気が無ければ生きていけないように。

もう、互いのない明日は無かった。


『オレは、貴方を殺せない』


濡れた目尻を指で拭って、蔵馬ははっきりと、そう言った。


「俺はお前を放すつもりは無い」


うつろな瞳が、けれど真っ直ぐに蔵馬を射抜く。


『……強情ですね』

「お前もな」


どちらからとも無く、笑みが零れた。


もう、どちらが欠けることも考えられなかった。
ならばもう、前に進むしかない。





浅ましくも現在を


訪れるか解からぬ未来へ


失った過去へ

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