10. ドクター


「………飛影。前々から聞きたかったんだが」
「何だ」
「どうして貴方はうちに来るたび怪我をしているんだ?」
「………」
「それとも、怪我をしたからうちに来るんですか?」
「………」
「ここは病院じゃないし、オレは医者じゃあない。治療だけなら、わざわざここに来る必要なんて無いでしょう」
「………貴様の薬が一番効く」
「お褒めいただき光栄です。じゃあ、いくらかビンに詰めて差し上げましょうか?わざわざうちに来なくても自分で治療できるように」
「自分でやるのは面倒だ」
「だったら他の誰かに塗ってもらえばいいでしょう」
「あいにく皆仕事中でな」
「医務室くらいあるのでは?」
「…………無い」
「ばればれだよ、飛影」
「……………」
「……腕の方の傷、見せて」
「………っ!!」
「おや、痛かったですか?」
「貴様………わざとだな」
「ええ。貴方がもう無茶しないように。少しは懲りるかと思ってね」
「…………」
「ほら、オレに治療させればこんな目に合いますよ?」
「…………」
「それでも、ここに来る?」
「…………」
「…………」
「迷惑か」
「え……」
「ならはっきりそう言え」
「え、っと……そういうことじゃなくて……」
「何だ」
「…………」
「…………」
「――……いいよ、もう。医者代わりでも」
「……別に医者代わりになどしてない」
「してるでしょう」
「…………」
「…………」
「…………」
「あ、そうか」
「?」
「ここに来れば、雪菜ちゃんの様子も見に行けますね」
「…………もういいんじゃなかったのか」
「違いました?」
「俺には邪眼があるんだぞ」
「あ………」
「…………」
「……じゃあ、どうして」
「…………」
「…………」
「……貴様の作る飯は不味くない」
「……それはどうも。―――でも、美味いものくらい魔界にもあるでしょう?」
「………ここに来ればつまらんパトロールなんぞもしなくていい」
「………ここにいる方が面白いと?」
「…………寝る場所もある」
「…………いつも木の上でも平気で寝てるのに?」
「……………」
「……………」
「……………」
「あのね、」
「何だ」
「素直にオレに会いに来てるって言ったらどうですか?」
「誰がだっ!」
「そうか、医者代わりじゃなくて……なあんだ、そういうことか」
「そうとは何だ、そうとは!!」
「う〜ん、思われてるなあ、オレ……あ、そっちの傷も酷いね」
「だから違うと〜〜〜〜〜っっ!!!」
「しみるでしょう?まあ、効き目は倍だから我慢して下さい」
「〜〜〜〜〜もう二度と来るかっ!!」


2004〜2006?


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