「もしもの話をしましょう。オレが妖狐と南野秀一、二つに分かれたら貴方はどちらを�狢�馬�瓩噺討屐�」
「……いきなり何だ」
「深い意味はありませんよ。もし仮に、そうなった場合の話さ」
「下らん」
「そう言わずに。知りたいんだ」
「…………」
「飛影」
「どちらも貴様だろうが。下らん」
「どちらか一方を選ばなければならないとしたら？」
「お前、何が言いたいんだ」
「異なるのは容姿と性質、そして力の有無。妖狐は貴方も知るあのオレさ。対する南野秀一は完全なる人間。今のオレから妖狐の性質が抜け出たものだと思ってくれればいい。姿かたちも今のまま。但し両方とも同じ記憶――妖狐として生きていた頃からのものを持っているとする。……果たしてどちらが�狢�馬�瓩任△襪里�？」
「要するに冷酷非道と言われた伝説の盗賊妖狐蔵馬か、人間界で優等生として崇められている南野秀一か、どちらをお前と認めるかということか」
「そういうことですね」
「……どちらも貴様だ。妖狐であったお前が一度死に、再び人間である南野秀一として生を受け、生きてきた結果が今のお前だろう。違うのか」
「なら、そのどちらかが欠けたオレはオレではないのか？」
「…………」
「どちらかだけでは、貴方にとって�狢�馬�瓩任呂覆い鵑任垢�？」
「……お前は、お前だ」
「飛影」
「実に下らん。三時間たったら起こせ」
「……飛影」
納得のいかぬような蔵馬の顔に背を向けた。
不愉快を腹の奥にのみこんで目蓋を固く閉ざす。
どちらがお前か、だと？
そんなもの決められるはずがなかったのだ、はじめから。
2007.3
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