これ、良かったら貰って。
そう、今話題の映画、幽助と行こうと思って買ったんだけど、あのバカ、いつの間にか自分で同じチケット買ってたみたいで――そんなくだらねぇもん行けるか、なんて言ってたくせに。
確かにあいつには似合わないかもね、カップル向けのロマンチックな話なんて。
でも、すごく素敵な話みたいだから、飛影君と一緒に、ね?
……そう言って、彼女はオレに映画のペアチケットを手渡した後、いつもの明るい笑顔で去っていった。
その背中を見送りながら、オレは首をかしげる。

「蛍子ちゃんに話した?」
数日後、道端で偶然顔を合わせたパチンコ帰りらしい彼女の恋人に、その疑問を投げかけてみた。
「何が?」
「オレと飛影のこと」
「いんや、」
袋の中からスナック菓子の袋を一つ取り出して、やるよ、二つあるから、と言い、
「知ってたよ、多分オレよりずーっと先に」
咥えていたタバコの灰を落として、彼は笑った。
まったく、この二人は似ている。根本的な何かが。
「すごいね」
隠していたわけではないけれど、そうだと悟られるようなことは何もなかったはずだった。
接していた時間とて、さほど多くはないというのに。
「こえーよ、隠し事なんてできねぇもん」
「良いことだよ、それは」
「そうかぁ?」
苦笑しつつ、幸せそうなのは気のせいではない。

「じゃあ」
「おう、」
また、と言って手を振りかわす。

「今度、お邪魔するよ。映画の評論でもしに」

うるせぇ、と笑い混じりの声が真昼の街に響いた。

**彼と彼・彼と彼女**

2006?


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