バイオリズムのせいで時折訪れる狂気。
収まるどころか時を重ねるごとに激しく表に表れるようになり、ああ、そろそろココに留まるのも限界かと思う。
先日久しぶりに会った知人に「何も変わってないね」と言われた。
不審がられるようになるのもきっと時間の問題。
それでも、まだ。
もう少し、このまま。
「は、あ……っ」
大きく息を吐いて、夜露で濡れた草の上に倒れこむ。
銀の髪が風になびいて舞い上がった。
「お前は本当に、手加減と言うものを知らない」
額から滴った生暖かい血が閉じた目の縁を辿って流れていく。
そのあとをなぞる指があった。
「させないのは貴様だろうが」
見ろ、と言われて視線をやれば、突き出された腕にざっくりと刻み込まれた傷があった。
「本気じゃなければ削ぎ落とされていた」
「そのつもりでやりましたから」
それは、必ず避けてくれるだろうと思ったからこそ。
だからこそ、こんなわがままをオレはお前に言える。
くつくつと笑ってやると、呆れたようなため息が漏れ。
「もういい」
座り込んだ彼は支えるように、この身体を抱きしめた。
そのあたたかさに包まれて目を閉じれば、やがて髪は漆黒に染まり夜にとける。
そうして互いの血のにおいに酔いながら、夜明けまでの僅かな時間をまどろみの中で過ごすのだ。
こんな儀式にも似た行為が幸せだと思える自分はやはり、人ならぬもの。

今は、まだ。
いつかあるべき場所へとかえる、その瞬間まで。

**Insane**

2006


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