出会って間もない頃はいまいち掴めないやつだと思っていた。
けれど言葉を交わし、共に戦っているうちに、ある法則みたいなものに気付いた。
例えば同じ「下らん」でも鼻を鳴らせば侮蔑、目を逸らして俯き加減なら照れ、とか。
無表情なようでも実はちゃんと、よーく見れば感情がそのまんま表面に出ていたりして。
それらを見極められるようになれば、これ以上ないほど明確だった。
「なあ」
灯をつけたばかりの煙草を咥えながら、オレは傍らに立つ黒い影に呼びかける。
そいつは、少し離れたところにできた小さな人だかりを見ていた。
何やら花を植えるのとかで、中心にいるのはそういう知識を多分に持ったあいつだった。
日に何度水をやればいいのかとか、肥料はどうとかいう蛍子たちの質問攻めにも、いつもと変わらぬ笑みで答えている。
お前が立っている場所からなら、それがもっとよく見えてるんだろう。
振り向いた目は、好きなテレビ番組を見ている途中で親にチャンネルをかえられた子どもの睨み、まさにアレだ。
「蔵馬のこと、好きか」
お前は最初は意味が飲み込めないのかぽかんとする。
やがて徐々に眉間に皺を寄せ、同時に頬も少しだけ赤く染まって。
しまいはふんっと背を向けて一言。
「馬鹿にしているのか!」
こらえきれなかった笑い声と共に吐き出した煙が青い空に消えていく。
それを見送ってからもう一度視線を戻せば、また同じものを見ているお前。
再び吹き出しそうになったが、声を上げるのは辛うじて止めた。
ばれればおそらく完全にヘソを曲げるだろうから。

正直で、実によろしい。

**Honest**


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